酸・塩基バランス食-虫歯の免疫力
    
プライス・ポッテンジャー栄養財団
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南洋諸島その他の未開民族が虫歯に免疫力をもたらした酸塩基バランス食

ウェストン・プライス, DDS, MS, FACD

1934年12月4日ニューヨーク歯科100年会議で読まれたもの、デンタル・コスモス:1935年9月号より復刻

虫歯に対する免疫力を左右する要因に関する説はたくさんあるが、"潜在的アルカリ性”が多くによって決定要因だと強く支持されてきた。 これを強く主張したのが、マーサ・ジョーンズ博士の「歯科疾患との関わりで変わる正しい食事の概念」と題する論文である。 彼女と同僚は、これまでの何度かのやりとりでこの要因を強調してきたが、この問題を評価するために必要な定量的データを見ることが出来ない。 特定のアルカリ(base)食が免疫力と関係が見られたという事実は、酸アルカリバランス(acid-base balance)が免疫力に果たす役割とは殆ど関係がないだろう。

この問題を検討するに当って、非常に高い免疫力を持ち続けている多くの食生活の検討が必要なのはいうまでもないことだ。 近代文明下ではそのような標準となる集団がない。 近代化した人間には、虫歯が多く、手の施しようの無い集団もある。 私が、未開種族の生き残りを訪ねて何年か遠征してきたのはこのためである。 彼等は、先祖のように虫歯に免疫があり、孤立しているということが、文明と接触した時に高かった免疫力がひどく虫歯になり易くなる変化を見るのに欠かせない。

以前にスイスのアルプス高地(1)の孤立した谷での調査を報告した。 ヘブリディーズ諸島(2)、アラスカのエスキモー(3)、北部と中央部カナダのインディアン(4)も報告しました。 更に、この夏行った太平洋諸島にあるメラネシアとポリネシアのついても詳しいデータが得られました。

今回の報告では、この人たちや高い免疫力を持つ人たちの食事と免疫を失った人たちの食事を酸アルカリバランスの面からも検討も加えました。

 

表1: 未開食と近代食の虫歯
未開人
近代人
アルプス
46
298
ヘブリディーズ
11
300
エスキモー
0.9
130
インディアン
1.6
215
南洋諸島人
3.4
308
 免疫を高く維持できる食事の酸度比較データを分かり易くするために、まず、孤立している時の虫歯の数と同じ部族の人たちが文明に接触した時の虫歯の数を視覚化する必要がある。
表1にグループごとに示されている。 5つのグループがあり、南洋諸島の人達は都合上1つのグループにしている。
孤立したスイスアルプス高地の谷間の人には1000本当り46本の虫歯がある。 近代化して現代食を食べるスイス人には1000本当り298本虫歯があった。
  アウターヘブリディーズの未開ガリア人は、1000本当り11本の虫歯で、近代化したグループでは300本だった。 孤立したエスキモーでは1000本当り1本以下0.9本で、近代食が得られるところでは130本あった。 未開の現地食を食べるカナダの北部と内陸部のインディアンでは、1.6本の虫歯があり、近代化したインディアンでは215本あった。 南洋諸島の未開食を食べる人たち全体では1000本当り3.4本で、近代文明の食事をする人ではこれが308本に増える。 ここに出てくる人たちの平均的食事の総酸性度と総アルカリ度を見るにはこの数字を覚えていることがかぎとなります。

 

酸とアルカリ量の数値は表2にあります。
この表の人たちは表1の人たちと同じです。

表2: 未開食・近代食の酸アルカリ量(cc)

アルカリ
未開  近代  未開  近代 
アルプス 359 165 355 171
ヘブリディーズ 248 171 152 152
エスキモー 707 234 382 227
インディアン 892 234 628 227
南洋諸島 322 203 399 244
 得られた食事の酸とアルカリの定量のため、アルカリ度にはカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、酸度にはリン、塩素、イオウを測定した。 定量はシャーマン表を使って特定の食事に独自の同定を行った。 単位はソルター、フルトン、アンジアーが1931年5月の栄養ジャーナルで提案した方法を使った標準酸、標準アルカリに対するcc。 アルカリに対する酸、酸に対するアルカリの過剰分が酸性度、アルカリ度として表されている。 全く違った部族食、大きな多様性のある気候や全く違う生活習慣を持つ未開種族5つのうち4つの種族では、免疫をもたらす食事はアルカリ因子よりも酸因子のほうが高かった。
 差の大きいところもあれば小さいところもある。 高い免疫性から高い罹病性に変わっても、虫歯に罹り易くなっても酸性度は全く高くなっていない。 このグラフは、免疫性と虫歯になり安さの食事の酸の量と塩基の量をを示しているが、部族間に酸の総量と塩基の総量に大きな違いがあるのを注目して欲しい。

ジョーンズ博士等が行ったハワイ諸島での臨床研究は、ポイとミルクからなるアルカリ性の食事だった。 ポイは、たろ芋の煮たのを粉にし水を加えて一定期間醗酵させた物。 有機酸は全部とは言わないまでも殆どが体内で酸化されるので、酸性度の影響を評価するのは、主に無機酸で行う。 ポイを醗酵させることは、物理的に酸塩基バランスを変えるものではない。 5つのグループの未開人と近代化人の酸塩基因子の数値は以下の様になる。 アルプスの未開民族では窒素酸が359ccと塩基が355cc;近代化集団では酸165、塩基171。 アウターヘブリディーズのガリア人未開集団では酸が248、塩基が152、近代化集団では酸が171、塩基が152。   未開エスキモー食の酸は、707ccN、塩基は382;近代化エスキモーでは酸が234ccN,塩基が227。 インディアンの未開集団では酸が892ccN、塩基が628;近代化集団では酸が234ccN、塩基が227。 未開の南洋諸島の食事では酸が322、塩基が628、近代化群では酸が203、塩基が244。 したがって私のデータではジョーンズ博士が主張する説を支持しない。

特に興味深いのは、私が調べた南洋諸島の集団ではタロが最も一般的で広く使われている食べ物であることだ。 ハワイ諸島を除く全部の島、マーケス、ソサエティ、クック、トンガ、ニューカレドニア、フィジー、サモア諸島の集団の未開食に従って適切に利用される場合、タロは熱した石と上に被せる葉と土のオーブンで蒸し焼きにされた物は、孤立し近代文明の食品と接触が無く土着の野菜や果物や海産物だけを使っている集団では、いづれの場合も虫歯に非常に高い免疫力をもたらしている。 これらの人たちの栄養については紙幅の都合上別の方法で化学的活性化物質について述べる。

穀物、肉、魚などの酸性食品を無くしたり減らしたりしようと強く言う信奉者が居るので、酸塩基バランスの問題に信頼できるデータを収集することは急務である。 事実、食事をアルカリに保つことが重要だと強調する宣伝が専門家や一般に大量に出回っている。


私の見るところ、蓄積してきた広範なデータ、様々な未開集団、彼等の文明との接触で崩壊した集団と食べ物の調査では、虫歯以外に重要な身体構成因子がいくつか影響を受けていると思われる。 私の調査では、未開集団には歯列弓の奇形や歯並びの悪さというものは全くといってよいほど見かけられないが、近代文明の食べ物と接触した時点からこれらに障害が出始める。

これが食べ物の酸性度やアルカリ度に関係するとは思えない。 発達期、つまり出産前、出産後そして幼児期の成長期に栄養素のミネラルや活性化因子が関係していると思われる。 酸性の食べ物には、酸性をもたらす重要な要素、燐酸が含まれており、酸性食品を無くしようとすることは、利用可能な軟組織、硬組織に必須な要素リンを危険なほど減らすことになる。

酸性やアルカリ性がミネラルやその他の要素と別物であるかの誤解が多くの問題をうんでいると思う。 リンが酸であるのは塩基と結合して中和するまで、これを理解せずに燐酸を含む食べ物を駄目とするために起こる問題を理解せずに食べ物を酸性・アルカリ性という単純リストを作って食べ物の流行を追うような人が居る。


この良い例がある: 16歳でまだ童顔の女の子が相談と診療のために連れて来られた。 成長因子以外の機能と身体発育に著しい遅れがあった。 この子の栄養は、酸を作る食べ物を出来るだけ無くす様にという教えを持つ防衛食リーグ(Defensive Diet League)のチラシにほぼ従ってきたと報告を受けた。 この子は、自分が未発達なのを非常に気にしていて同年代の子と社交行事に出るのを嫌がった。 私のところへ助言と治療を求めてきたが、歯列矯正具を使って顔の骨の位置を変えるのは出来ないことだし適当とは考えられなかった。 私は、全面的に栄養強化策をとった。 成長因子がまだ一部存在していて反応することを期待してミネラルや活性因子を含む食べ物を与えた。 顔の発達に著しい改善が見られた。 一年で大人の顔になってきたのだ。 彼女は、この良い変化を意識して大人しく引っ込むのではなく、同年代のグループのリーダーになったのである。

医学、歯学が完全な身体だけでなく栄養の基準としてももっと早く未開人を見てこなかったのは真に残念なことである。

この手紙を口述しているこのとき、一人の看護婦が蛋白質と炭水化物を同時に食べてはいけないというある集団の強い教えに従うべきかどうか聞きに来て中断した。

南洋諸島の人達のように、身体が優れておりこれほど高い比率で近代の退化病が無い人が存在するのは殆ど聞いたことがない。 彼等の食事は殆ど毎日陸の動物の蛋白質と陸の野菜の炭水化物でその殆どがでんぷんが非常に多いもの。 これは殆どオーツと海産物で暮らしているアウターヘブリディーズのガリア人と同じだ。

虫歯への並外れた抵抗力を持つ人たちやその免疫力を失った人たちを研究することで、両者の間で変わった物の数を最小限にすることが出来た。 そうすることで始めて変わった栄養素や虫歯の発生数の変化に直接かかわりのある量の変化を詳細に検討することが出来た。 これが更に別の問題対策法をもたらした。 未開人によって良いと分かっている食事に比べて、欠乏食に足りない成分を追加することでこの追加成分が免疫力を変えるかどうか特定することが出来る。 この方法によって罹っている虫歯は抑制し、発生を完全に防ぐことが出来る。 

これら色々な未開集団の全ての食べ物を化学組成や活性成分にばらしてみたところ、全てがほぼ同じであったことは特に重要だ。 歯科の専門家には虫歯予防への有効な方向性を強く示している。 虫歯への抵抗力がなくなるのと共に、多数の退化現象が他にも同時に起こっている、または起こりかけているので、これらの身体の具合の悪さも虫歯のように、単独の病気ではなく一症状である強力な証拠がある。 これは近代予防医学が退化病に強い免疫力を作るために進むべき方向であるのは明らかだ。

これらの未開種族が我々の近代文明に接触し虫歯への免疫力を無くしたどの場合でも、郷土食の一部が輸入された精白小麦、砂糖そして甘い商品に入れ替わっていた。 これらの輸入食品には、成長や治癒に必要な天然の成分が非常に少ない。 精製した砂糖にはミネラルも活性成分も事実上全くないし、精白小麦からはミネラルの4/5が、胚芽は活性成分ごと全部が取り除かれている。 糖蜜やソルゴーにはリンが非常に少ない。 カルシウムはあるが、これはもっと安全なミルクや野菜で簡単に摂れる。 カリウムは豊富。

濃縮した甘いものはどんなものでもたくさん摂るとカロリーが高すぎて安全なものは無い。 一日の上限は2000-3000カロリーで、食品中に一日2グラムのリンが必要(この2/3は体の形成に必要)であるから、これだけの量を糖蜜で摂るとなると13,300カロリー、つまり10ポンド(4,5kg)摂取しなければならない。 食べられたとしても害が大きいだろう。 精白小麦で充分な量のリンを摂ろうとすれば、毎日4,5ポンド(約2kg)の白パンを食べなければならず、カロリーは10,000にもなってしまう。

私の診療では、未開人から学んだことを実践しようと努力している。、 未開種族のをそのまま取り入れるのではなく現代食を体を作る成分であるミネラルや活性成分が未開の人々の食事と同じになるように強化している。 通常精白小麦を全粒粉に変え、カロリーの高いもの砂糖や甘いものを除去し、急速成長する小麦やライ麦をたっぷり食べた牛の牛乳バターのような脂溶性の活性成分のある食べ物を加え、動物の臓器と一緒にとる。 退化病に強い予防力を持ち、虫歯に免疫があるだけでなく優れた体を作るのに非常に適した未開人が食べていたような海産物を摂る。

私達は自然のやり方を学びそれを使う。 未開食は押並べてミネラルや活性成分、特に脂溶性の活性成分が比較的多くカロリーは比較的少ない。未開人の免疫力の高い食事から虫歯になりやすいものへ変ったもので(高アルカリバランス説が正しいとすれば)高アルカリ性から高酸性へ変わったものは一つもない。 必要なものがアルカリ性のような簡単なことであれば、どうして重炭酸ナトリウムを欠乏食に添加して虫歯を抑える事ができなかったのだろう?

文献

  1. プライス、ウェストンA.: ”現代文明に虫歯が何故付き物なのか ?” デンタル・ダイジェスト. 89:94, 147, 1933年3月及び4月.
  2. 同上: デンタル・ダイジェスト88:225, 1933年6月.
  3. 同上: デンタル・ダイジェスト 40:210, 1934年6月.
  4. 同上: デンタル・ダイジェスト, 40:130,1934年4月.

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page last modified:  01/18/2001

 

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