酸・アルカリバランス
    

プライス・ポッテンジャー栄養財団

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酸・アルカリバランスと健康
バージニア・ワージントン, ScD


 ガン治療意のエマニュエル・レヴィチ、常に議論をかもす検査開発技術者ケイリ―・リームス博士、眠れる預言者エドガー・ケイシ―のような伝統医学医師から代替医学先駆者まで、多くのヒーラー(治療者)が酸性・アルカリ性について語っている。 彼等が体内の酸・アルカリバランスという時、何を意味しているのだろうか。 何故重要なのか? 栄養や生活法がどのように酸・アルカリバランスに影響するのか? この問題は、特にウェストン・A・プライス博士の研究に関係しているので、この論文では踏み込んでいくつか答えてみたい。

 まず、酸性、アルカリ性を化学の基礎知識と共に定義しよう。 化学で酸性、アルカリ性といった場合、水素のことをさす。 酸は、溶液中で水素を放出する物質のことで、アルカリ又は塩基とは溶液から水素を奪う物質のこと。 遊離水素の量は、pHという1-14の尺度で正確に酸性、アルカリ性をしめしている。 pH7以下は酸性、pH7以上はアルカリ性とされている。

 

表 1. 体組織のさまざまなpH(1) (12)     
組織     pH
骨格筋 6.9 - 7.2
心臓 7.0 - 7.4
肝臓 7.2
7.1
血液 7.35 - 7.45
唾液 6.0 - 7.4
尿 4.5 - 8.0
  体内では多くの機能が特定の酸性度、アルカリ度で起こるので酸・アルカリバランスは重要だ。 多くの酵素反応や化学反応は特定のpHレベルで起こっている。 pHが僅かに変化しただけで体の機能に大きな影響がでる。 例えば、体液が僅かに酸性に傾くだけで、筋肉の収縮力が弱まり、ホルモン様アドレナリンやアルドステロンが増える。 また、体の各部にそれぞれ酸度アルカリ度がある。 一部を表1に示した。 唾液と尿は、pHが広範囲で変わるが血液は一定の狭い範囲にあることに注目していただきたい。 





 酸・アルカリバランスの調整

表2. 体内で酸・アルカリバランスを調整する因子(1)
血液中:
細胞中:       
炭酸水素イオン
水素を放出したり利用する化学反応
アミノ酸
アルブミン
細胞膜ポンプや拡散による細胞からの水素の出入り 
グロブリン
ヘモグロビン
  血液中や組織での酸・アルカリバランスは重要なので、バランスをとるためのいくつかの調整機構が表2のように備わっている(1)(2)。  


呼吸、排便、消化、細胞代謝など様々な身体機能が酸・アルカリバランス調整に関わっている。 血液中では、pHの変化を抑える緩衝物質がある。 この成分で最も重要なのが炭酸水素イオン、アルブミン、グロブリン、ヘモグロビンである。 血液pHの調整には他に肺と腎臓がある。

肺は、血液から二酸化炭素を取り除いて酸アルカリバランスを調整している。 二酸化炭素は体内で水と結合して炭酸を造るので二酸化炭素を取り除くことは酸を取り除くことになる。 呼吸数は、体の酸性度で変わり、酸性では呼吸数を増やして二酸化炭素排出を促進して 酸性度を下げ、アルカリ状態ではゆっくりとなって酸を保持してアルカリ度を下げる。

腎臓も血液のpHに反応する。 血液の酸が強くなると、腎臓から水素を尿中に出して過剰ナトリウムを保持する。 この交換にはリンが必要で、他に供給源がないときは骨から取り出す。 血液が強酸性になると、腎臓は水素が四つあるアンモニアを尿中に出すという別の方策をとる。 強アルカリ性になるとこれが逆になり水素を保持する。

消化工程では、酸・アルカリバランスは胃と膵臓からの分泌に影響される。 この分泌液は血液に吸収され体全体に影響する。 何かを食べると胃には胃酸が分泌される。 この酸に対して膵臓は炭酸水素イオンを出して胃酸を中和し膵臓の消化酵素がうまく働くようにする。 通常食後一時的に酸、アルカリの大量分泌、胃と膵臓の分泌に対応した血液pHの変化が起こる。  通常血液のpHは、すぐに正常値に戻る。 しかし、消化液の分泌がバランスを崩すと全身が影響を受ける。 医師には、ウィリアム・ギルポット博士のように、膵臓の重炭酸の分泌が良くないのが体の酸性化を生むと考えている人も居る。 その他の消化器異常でpHに影響するのは重炭酸を無くす下痢と酸がなくなる嘔吐がある。

血中のpHが厳格に調整されているように、細胞内の酸・アルカリ環境も狭い範囲に治まるように調整されている。 この調整の一つに細胞膜で水素を出し入れするポンプ作用がある。 このポンプには、リンとマグネシウムが必要で微量養分が酸・アルカリバランスに関与している。 細胞内のpHを調整するものに水素の量を増減する化学反応がある(1)。

 酸性、アルカリ性の過剰症状

 血液の酸性が強くなると、眠気、更に意識朦朧、昏睡になる。 腎臓や肺の病気、脱水症、特定の薬物摂取、糖尿病や下痢などから急性酸毒症になる。 この治療には重炭酸ソーダのようなアルカリ溶液を与える。 酸毒症の特異なものにケトン症があり、脂肪が多く炭水化物が少ない食事や糖尿病、飢餓などで炭水化物よりも体脂肪が燃焼される時に起こる。 しかし、炭水化物を含む正常な量の脂肪を摂取すると、大多数の人には脂肪による酸・アルカリバランスの問題も全く起きない。

血液のアルカリ度が強くなると、刺し込むような腹痛、筋肉の痙攣、イライラ、異常興奮などの症状が出る。 急性アルカローシスは、腎臓障害、過呼吸、利尿剤またはステロイド薬の服用、嘔吐、胃漏(gastric drainage)等によって起こる。 この治療には、塩化アンモニアなどの酸溶液を投与したり、排気した二酸化炭素を紙袋から吸うなどする(3)。

体のpHを測る

 臨床的に知られ、利用されている方法は血液の酸度、アルカリ度がほとんどで、血液のpHは測定できるが他の組織のpHのは困難若しくは不可能。 医師が体と細胞の酸度、アルカリ度を特定するのは概ね血液を分析して行う。 血液中の要素で調べるものには、ナトリウム、カリウム、塩素、二酸化炭素、炭酸水素塩がある。 アニオンギャップとして知られる値は、ナトリウム、塩化物、炭酸水素塩を測定して得られる。アニオンギャップは他の数値と共に体組織の酸度、アルカリ度を知るのに使われる(1)。

 代替医療実施者は、ケーリー・リームス、ハロルド・ホウキンス、エマニュエル・レビチのいづれかが開発した方法を使う。 いづれも尿のpHと他の要素を測って代謝状態を知る。 リームス博士とホーキンスは唾液のpHも測る。 体内のpHは、尿と唾液のpHだけで分かる方法はない。 前述のように、腎臓は過剰な酸を排除する方法がいくつかありそれぞれ尿のpHの出方が違う。 同様に、唾液pHも口中のバクテリアや微生物によって変わるため、体内環境の確実な指標にはならない。 それでも、リームス博士は、唾液pHは消化液の強度を反映していると考えている(4)、(5)、(6)。

 栄養と酸・アルカリバランス

表3. 酸、アルカリ、中性灰食品 (8)
酸性灰食品 アルカリ灰食品 中性灰食品
パン(穀物) チーズ アロールート
ケーキ クリーム バター
シリアル 果物全般 キャンディ
マヨネーズ ジャム コーヒー
クランベリー ミルク 澱粉
プラム アーモンド ラード
プルーン マーガリン
ココナッツ 植物油
ブラジルナッツ 糖蜜 ポスタム
胡桃 野菜全般 白砂糖
落花生 シロップ
l豆類 タピオカ
トウモロコシ
第二次大戦前は、食べ物がいかに体の酸・アルカリバランスに影響するかということに強い関心があった。 現在では、一般医療ではさほど関心を持たれなくなったが、代替医療では色々な食事の酸・アルカリバランスはかなり強調されている。 議論は今も続いているものの、食べ物が体の酸、アルカリを決めるものと考えられている(7)。



議論の進展の中で言葉に混乱が起こっている。 食べ物がどう体の酸・アルカリに影響するかを調べるのに、色々な食べ物を燃やして灰にし、この灰のpHを測っている。 そうして、その食べ物が酸、アルカリ、中性等ということが表3のように決定された。


更に、エドガー・ケイシーやバーナード・ジャンセンのような代替医療実践者は、酸やアルカリを形成する食品を体内での反応に基づいて言及している。 この分類は表4に示している(9)。

 

表4. 酸、アルカリ生成食品 (9)
酸生成食品 アルカリ生成食品
肉全て、鶏、卵、海産物 上記以外の果物全て
パン、朝食シリアル、クラッカー、パスタ、米など穀物から作る食品全て 豆、グリーンピース、レンズ豆以外の野菜全て
サラダ油、バター、マーガリン、ラードなどの脂肪 ミルク、バターミルク、チーズ、ヨーグルトなど乳製品全て
豆、グリーンピース、レンズマメ、落花生など豆類
プルーン、プラム、クランベリー、ルバブ、サワーチェリーなど安息香酸やシュウ酸のある果物
チョコレート
コーヒー、お茶、殆どのソフトドリンク
砂糖、シロップ
本物の木の実全て
酸、アルカリ灰と酸、アルカリを作る物は互換性があるかのように使われているが、表にあるように両者はいつも同じというわけではない。

 より科学的定義を使うと、アルカリ灰食品には、マグネシウム、カルシウム、カリウム、が大量にあり、かつ/又はナトリウムやアルカリ化合物になるものがある。 ほとんどの果物や野菜はアルカリ性と考えられている。 酸灰食品は、塩化物、リン、硫黄、酸化合物を作るミネラルのあるもので、肉、魚、鳥、豆類、穀物などリン化合物が多く、マスタードと卵には硫黄が入っている。 プラム、プルーン、クランベリー、ルバーブ、サワーチェリー等の果物も体内で完全には分解されないシュウ酸か安息香酸があるので酸になる(5)、(7)、(8)。

 食品が酸又はアルカリのどちらの残留物を残すかは、それぞれの消化や代謝によっても違う。 例えば、柑橘類やトマトなど有機酸を含むものは、代謝が完全に行われないため人によっては酸を作るもとになる。 これは胃酸が少ない人や甲状腺の働きが悪い人では頻繁に起こる(5)。

体の酸性度や食品の反応に影響する別の代謝要因や生活スタイル要因がある。 感染、喫煙、アルコール摂取などは身体を酸性にする傾向がある(5)、(10)。 逆に、運動をすると体はアルカリに傾くが、やりすぎて気分が悪くなると乳酸が増えて酸性になる(1)、(5)。 食事中の微量要素も酸、アルカリバランスを変える。 マグネシウムとリンが細胞ポンプのために適量必要。 亜鉛は胃酸の分泌と腎臓の酸分泌と保持に必要。 そのほか、ビタミンB群など炭水化物や脂肪を完全に燃やすのに必要。 

エドガー。ケイシーなどは、80%をアルカリ食品、20%を酸性食品にするのが良いといっている。 具体的には、野菜4、果物2、澱粉質食品1、蛋白質食品1を推奨している(9)。 この割合が全ての民族に当てはまるかどうかははっきりしない。 対照的に、ウェストン・プライス博士が調査した未開人の伝統食は、酸性灰食品のほうがアルカリ灰食品よりも多かった。 (書庫からの10ページ参照)。 伝統食には、加工食品よりもミネラルが多かった(11)。 プライス博士の調査では、栄養の詰まった、未精白の適切に調理された食品が重要であることを確認している。  

更に、遺伝的違いが、どんなものがバランス食になるのかを決める可能性がある。 例えば、エスキモーは脂肪を他のどの民族よりも効率的に利用できるし、他の民族ではなる脂肪の摂りすぎによるケトン症にもならない(12)。 ケイシーの推奨することがプライス博士のと違うのは、それぞれ気候や活動性の違う民族に合っているという事なのかもしれない。

アメリカに住むヨーロッパ人の子孫は、特に虫歯に対処するために他の方法と共に食事の酸性、アルカリ性を使ってきた。 南カリフォルニア大学の歯科教授ハロルド・ホーキンズ博士は、1940年代に食品のpH、ミネラルによる唾液、尿、血液への影響を調べている。 唾液と尿のpHやミネラル量は食事によって変わるが、血液のpHは消化や色々な代謝や生活スタイルによる影響のほうが大きいことを発見している。

この研究成果として、ホーキンズ博士は、唾液と尿の化学組成をバランスさせる食事中心の処方によって、殆どの人に合う歯や病気治療が可能なダイエットを構築することが出来た。 ホーキンズ博士も、プライス博士のように適量の脂肪や野菜と共に動物性蛋白質と全粒穀物の重要性を強調している(5)。 

結論

 酸・アルカリバランスは、健康と身体の機能に重要な要因です。 食事は、食べるものとその代謝に影響する栄養成分の酸やアルカリを形成することで酸・アルカリバランスを変える要因の一つです。 栄養豊富な伝統食は、優れた代謝、正常な酸・アルカリバランス調整、最高の健康に必要な必須成分を与えてくれる。

編者注:代替医療実践者で肉、魚、穀物といった酸性食品を最小限にして果物と野菜を中心に摂るように主張している人が何人かいる。 果物や野菜はアルカリ化するミネラルを多く含んでいるということなど食事の一部にすることは大切だが、大部分の人にとっては酸、アルカリバランスを維持するために肉や全粒穀物など酸灰食品を最小限にする必要はない。 それどころか、酸灰食品が無いと体が適正な血液pHを維持することが出来なくなる欠乏症になる。 肉や動物性食品は蛋白質を、赤肉は亜鉛を、肉と正しく調理された全粒穀物はリンを供給し、これらはいづれも酸・アルカリバランスの調整に必要なものばかりである。 肉、貝、良質のバターにある脂溶性ビタミンは、酸・アルカリ調整を行う肺と腎臓という二つの臓器の健康維持を支えている。 ウエストン・プライスの研究は、アルカリ灰と酸灰ミネラルを豊富に含んだ栄養豊かな食事が酸・アルカリバランスを制御する複雑な臓器を含む全体の健康の鍵であることを示している。

参考文献

  1. ベダニ・A, デュボースTD (1995). .細胞と全身の酸・塩基調整 :液、電解質と酸塩基障害 (アリエフ, アルとデフロンゾ, RA, eds.). チャーチル、リビングストーン、ニューヨーク. p. 69-103.
  2. Narins RC, Kupi W, Faber MD, Goodkin DA, Dunfee TD (1995). 病理生理学、酸・塩基障害、講義と治療 IN:液、電解質と酸塩基障害 (アリエフ, アルとデフロンゾ, RA, eds.). チャーチル、リビングストーン、ニューヨーク. p. 104-198.
  3. Berkow R, ed. (1982). メルク、マニュアル(14th edition). Merck, Sharp & Dohme Research Labs, Rahwy, N.J. p. 945-52.
  4. Beddoe AF (1984). Biological Ionization as Applied to Human Nutrition, Principles and Techniques. Agro-Bio Systems, Fort Bragg, Ca.
  5. Hawkins HF (1947). Applied Nutrition. International College of Applied Nutrition. La Habra, California.
  6. Shenker GR (1997). The Nutri-Spec Letter 8(7):1-6.
  7. Rector FC (1973). 尿の酸性化 Handbook of Physiology Section 8: Renal Physiology (Orloff J, Berliner RW and Fieger S, eds.) American Physiological Society. Washington D.C. p. 431-54.
  8. Ensminger AH, Ensminger ME, Konlande JE, Robsin JRK (1994). Foods and Nutrition Encyclopedia (2nd edition). CRC Press. Boca Raton, Florida. p. 6-7, 41.
  9. Read A, Ilstrup C (1967). エドガーケイシーの啓示による食事、調理ガイド. A.R.E. Press. Virginia Beach, Va..
  10. Beisel WR (1990). 栄養と感染. IN: Nutritional Biochemistry and Metabolism (Linder M, ed.). Elsevier. New York. p. 507-42.
  11. Price WA (1935). 南洋諸島やその他の未開民族に虫歯への免疫をもたらす酸・塩基バランス食. Dental Cosmos 1935:842-46.
  12. Guyton AC (1980). Textbook of Medical Physiology (2nd edition). W.B. Saunders Co.. Philadelphia. p. 457, 803, 853.

ワージントン博士は、メリーランド大学の栄養科学の修士号、ジョン・ホプキンズ大学、公衆衛生学部栄養学博士号を取得している。 又、薬草治療者や伝統医療者について薬草栄養医療を学んでいる。

ワージントン博士は、栄養・薬草療法の臨床、研究、公衆栄養、栄養教育など栄養面で13年の経験を積んでいる。 現在は、ワシントンDCで個人開業しており、健康に関する著作もある。

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page last modified:  01/18/2001

 

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