脂肪の事実：トランス脂肪酸と不飽和脂肪酸は同じではない。

メアリーG. イニグ, PhD

食品中のトランス脂肪酸の害が最近主要新聞の記事で話題になっている。　残念ながら、これらの記事には、誤りが多い、特に人間の食事における飽和脂肪の役割について多い。

　例えば、ウォールストリートジャーナルに書いているレカ・バルは、トランス脂肪酸は飽和脂肪同様”コレステロールを増やし血管に脂肪が溜まる」と述べている（１）。　トロントスターに書いているリン・ロブリンは、消費者にトランス脂肪酸を避けてバターやココナッツ油よりもオリーブ油、キャノーラ油などの植物油をもっと使うように勧めている（２）。　ワシントンポストの記事にハーバードの栄養士フランク・フは、バターの方が棒状のマーガリンよりは良いが、商業販売されている植物油で作った容器入や液状のマーガリンは“バターよりも健康的選択である”（3）と述べている。　

　トランス脂肪酸は、飽和脂肪酸と焼き上げた商品に使われている場合では似た特性を持つが、トランス脂肪酸が飽和脂肪酸と同じというのは生物システムでは正しくない。　飽和脂肪酸の食事中の生物影響　対　食事中のトランス脂肪酸の生物影響リストは、実際には、良い（飽和）対良いとは言えない（トランス）リストである。

注：
(1)飽和脂肪酸はHDL、いわゆる良いコレステロールを高める一方、トランス脂肪酸はHDLコレステロールを下げる；
（2）飽和脂肪酸は、アテローム性リポ蛋白の血液中の値を下げる（a）、一方トランス脂肪酸はこれを上げる：
（3）不和脂肪酸は良いオメガ−3脂肪酸を保持する、一方トランス脂肪酸は組織が良いオメガ-3脂肪酸を失わせる：
（4)飽和脂肪酸は、インシュリンが結合するのを妨げないが、トランス脂肪酸はインシュリンが結合するのを妨げる：
（5）飽和脂肪酸は、体が作る正常な脂肪酸でデルタ-6-デサチュラーゼのような酵素機能を干渉しないが一方トランス脂肪酸は体で作られたものではなくデルタ-6-デサチュラーゼのような酵素機能に干渉する；
（6）飽和脂肪酸の中には、ウィルス、バクテリア、原虫と闘う時に体内で使われ、免疫システムを助けるものがある一方、トランス脂肪酸は免疫システムの働きに干渉する；
（7）ステア燐酸、天然飽和脂肪酸は心臓に好ましい食べ物である一方トランス脂肪酸は細胞膜の中でこれらの飽和脂肪酸に置き換わり心臓に最適のエネルギー源を奪う；
（8）飽和脂肪酸は、骨の適切な形成に必要だがトランス脂肪酸は骨を柔らかくする；そして
（9）動物からの飽和脂肪酸は、重要な脂溶性ビタミンを運ぶが工場で作るトランス脂肪酸はこれらの重要な栄養素がない。

　私達は、トランス脂肪酸を食事から排除する細心の注意を払う必要がある。　しかし、同時に飽和脂肪を食事から排除すると、カロリーは市販の植物油からのポリ不飽和脂肪酸、オリーブ油やキャノーラ油のモノ不飽和脂肪酸、蛋白質、炭水化物の形で他のカロリーに置き換わられる。
　過剰なポリ不飽和脂肪は、心臓病、ガン、体重増加その他の健康問題を起こすことが示されている。　過剰なオレイン酸は、プロスタグランジンのバランスを崩し体重増につながる。　キャノーラ油はビタミンE欠乏などの問題を起こす。　過剰な蛋白質は、脂溶性ビタミンの欠乏につながって腎臓の負担になり、蛋白質摂取量が増えると脂肪に変えられる。　過剰な炭水化物も脂肪に変わる。　どんな食べ物でも過剰なものは脂肪に変えられるが、全体的健康にとても大事な脂溶性ビタミンは動物性脂肪以外にはない。　　

食品製造業者は、ココナッツ油、パーム油、獣脂、ラードのような天然の飽和脂肪へは高くつくので進んで戻ろうとはしない。　教育を受けた消費者の一致した要求だけが、アメリカの食糧に健康的伝統ある脂肪を取り戻すことが出来る。

参照

1. レカ・バル、“トランス脂肪：味蕾は”欲しい！”と叫ぶが血管は拒否”ザ・ウォールストリートジャーナル 1998年6月8日
2. リン・ロブリン、”全ての脂肪は同じにあらず”、ザ・トロント・スター・ヘルストーク、1998年6月24日
3. フレッド・タスカー、”激しい論争”、ザ・ワシントン・ポスト、1997年6月2日

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page last modified:  01/18/2001