脂肪論争の歴史
    
プライス・ポッテンジャー栄養財団
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歴史から見る脂肪論争

T.L. クリーブ, M.R.C.P.


著名な外科医で医学研究者であるT.L.クリーブは、1975年に以下の論文を書いている。 この論文はキーツ出版から出したサッカリン病の本の中にある。 20年後の今、ポリ不飽和植物油が心臓病、癌、その他の現代文明病を起こすと彼が警告したことを示唆する研究がその後数多く出ているにもかかわらず、未だに反動物性脂肪ヒステリーがある。


血中の脂肪を増やし心臓病が増えるのは動物性脂肪のせいだと言う人たちは、太古の昔から食べてきた肉にある脂肪、バター、ミルクから作るクリームなどを食べるのを止めさせ、その多くが人類が使ったこともない全く新しい植物の種子から絞った油を使うようにさせてきた。 この変更が推奨されている理由は、植物油がポリ不飽和脂肪を豊富に含んでいるためで、摂取した場合飽和脂肪の動物性脂肪に比べて殆どまたは全く血中のコレステロールを増やさないとか、構造的に身体により貴重であるということである。 H・マルムロスなどは、このような変更を全国的に行っただろうし、オーストラリアのような特定の国では、酪農業が脅かされてきている。歴史的観点からこれを調べてみたい。


肉やミルクを食べ続ける為に羊の群れや牛、その他の家畜を飼育するのは、聖書(《旧約聖書》申命記32:14)にはキリスト時代の数千年前、モーゼよりも1500年前から石器時代の人類から始まっていて、エホバは、「牛のバター、羊のミルク、子羊の脂肪」を食べるように人間に与えたと書かれている。旧約聖書の中には脂肪を食べてはいけないとある部分もあるが、これは生贄の儀式に使う為に必要だからだった。私は以前エジプトのカルナク寺院のガイドから、ここにある全ての生贄の焦げ跡は僧侶によって食べられたものだという説明を受けた事がある。レビ記第7章の最初の10の詩を読んだ事がある人はこのガイドの言った事が正しいのが分かる筈だ。この太古の脂肪には私たちは良く適応している新石器時代よりはるか昔、人が狩をする以前から進化の過程で動物性脂肪が身近なものだった。


これらの太古の脂と対照的なのが植物種子から絞られる新しい油。これらの種子の多くが人類にとって自然な食べ物でないばかりでなく、(例えば綿実、ひまわりの種、ひまわりは旧大陸のものではなく新大陸からのもの)近代の油圧圧搾機や溶剤抽出が発明されるまでは大量に得られる事はなかった物で、この国(英国)では第一次世界大戦中の1916年頃にマーガリンが登場するまでは殆ど食べられる事はなかった。進化の観点からみると、これらの油は人類をアオカワラヒワ(鳥)の群れにしないばかりか、これらの油が登場してから進化上の不調和が昂じて心臓病が激増している。マーガリンは水素を流し込む事で飽和する事が多い。


動物性脂肪は、家畜を畜舎で飼育する事でなくすことができると反論するものもあるが、この議論は舎飼いしない羊で考えてみよう。動物性脂肪を植物性脂肪に変えるべきだという人の中に、典型的飽和脂肪であるマトンの脂を例外視するものはいない。牧草を食べた羊の脂は好物といえども食べるべきではないといわれる。これは、自然な食べ物の自然な味を排除するという進化上の重大な問題だ。


草を食べる牛や羊などの家畜が野性のものよりも筋肉内に脂肪が多いという事を示したクロフォードは、草を与えられた家畜の肉を食べる事は病原性のものを体内に取り込む、曰く「肥満したものを食べる」のと同じだから危険だといっているのだ。しかし、進化を考えるとこの主張には重大な誤りがある。


膨大な数の牛(それ以上の羊)が、この国では牧草で育てられているが野生の牛がこの方法では肥育できないのは、野性のウサギがいろいろな品種の飼育ウサギに較べて牧草で育たないのと同じだ。そう、動物がこのようになるには非常に長い間の選択的育種があったからなのだ。これは、ほとんど空を飛べなくなった家鴨を見ればよく分かる。事実、この国のアイルスベリー・ダックも中国の川辺に見られる家鴨の群れも子どもが世話をしている。何千年にも及ぶ選択育種によってこれほどまでに筋肉から脂に変わることができたのだ(人間もそのような食べ物になれるのに同じくらいの時間がかかっている)。従って、この進化(移り変わりの過程という意味で)した脂と病的脂を明確に区別する必要がある。でなければ、野性りんごとはかけ離れた栽培りんごが食べれなくなるし、先祖の草とは似ても似つかない小麦も禁止しなければならなくなる。脂肪で赤肉を霜降りにする事がおいしさを出しているのであって、それがないと赤肉は水っぽい味になる傾向がある。

なぜ、人間はこのように動物や鳥に脂を増やすような味を好むのか(野性の鴨とアイルズベリー・ダックの食べ比べをする人にとって)。その答えは、あらゆる姿勢や活動の中で筋肉動作を少なくして心臓の負担を減らす、また肉の中の脂肪(完全に燃焼する食べ物)の割合を増やすことによって血圧で重要な役割を人の生涯に渡って果たす腎臓の負荷を 最小限にするようになっているという事は間違いない。この脂肪を好む人間の傾向は、発言力のある少数派の意見として退けてしまわないようにしなければならない。

しかし、クロフォードは、牧草で飼育した家畜の脂肪の量だけでなく質についても批判している。家畜の脂肪は、いろいろなものを食べる野性のアフリカの家畜に較べて飽和脂肪が多い(飽和脂肪酸の割合が高い)というのだ。なのに、彼の野性動物のリストには、我々の家畜とそのミルクやバターと同じ脂肪酸の比を持つウガンダの雄のシロイタチまで入っているのだ。アフリカのシロイタチを食べたら害がある、特に心臓に害が出ると考えなければならないのか。実の所、人体は燃やす事のできる飽和脂肪の多いほうを好むようなのだ。わずか67年程前、パスツール研究所の所長メチニコフが長寿の研究で、ヨーロッパ全域に対し飽和脂肪が多いミルクとミルク製品で長寿を達成しているブルガリアの小作農に注意を喚起した事がある。今日でもヨーグルトが一般的に食べられている事でその影響は今でも見られ、体が自然に要求する自然な食べ物を止めろという人達に常に挑戦している。動物性の飽和脂肪に変えて植物性の不飽和脂肪にする事で心臓病を防げるということにはならないし、進化的な見方でも全く逆行しており、次のような危険性さえある。前述のように、綿実油とかその他の加工油がこの地上に大量に現われるようになったのは近代的油圧プレスや溶剤による抽出法が出てからのことだ。オリーブオイル以外のこのような油は第一次世界大戦前には食べた事もないのだ。だから、問題は人体になじみのないものを大量に取る事に危険性はないのかという事になる。


油の摂取量は個人差が著しく、ジャック・スプラットのようにほとんど油を食べない人もいれば、スプラット夫人のようにたくさん食べたい人もいる。この個人差は進化に起因していると著者は前署の中で述べている。寒い地域では、暖かい地域よりもカロリーを多く必要とし、それを大部分脂肪から摂るようになっている。ヨーロッパでさえ北部では40%のカロリーが脂肪から摂取されている。それに対しスペインやイタリア南部のような南の地域ではそれが20%である。従って、ヨーロッパの北や南からの侵略者の子孫であるイギリスや、異なる先祖が混じったアメリカのような国ではジャック・スプラットとその対極の人がたくさんいる。だから、進化からみると(好みとして)わずかな脂肪でも多すぎたり、かなりの脂肪でも少ない人もいるわけだ。自然な消費レベルが保てないのは経済的なものであったり学校給食や施設での給食によるものである事もある。

脂肪の摂取量と心臓病を関連付ける場合、前述のような進化の違いに留意するばかりでなく、外部要因によって明らかにこの違いから外れる場合も考慮した方が良い。しかし、そのような配慮は殆ど見られず、デンマーク人とアフリカのバンツー族の脂肪消費を比較するという大それた事をしているのが見られる。精製された炭水化物と心臓病の関係に異議を唱える人、特に個人的砂糖消費量と心臓病を関連付ける臨床試験に異議を唱える人は、脂肪の消費量と心臓病を関連付ける臨床研究は一つもないということを忘れている。

     T.L.クリーブ、MRCP(ロンドン)
     空軍医療研究所英空軍外科医長(退役)
     言語研究所会員(ロンドン)
     サッカリン病、キーツ出版、ニュー・カナーン、CT.1973

 


追記:脂肪の摂取については誤解されている更に複雑な要素が絡んでいる。脂肪酸は、体組織を作る重要な要素で細胞膜のリン脂質のほとんどを構成しており、単なるエネルギーの貯蔵だけではない。適正量のカロリーがある低脂肪食は基本的に炭水化物が多い。食事で脂肪が十分に得られない場合、炭水化物を一から脂肪に変えなければならない。人体が合成する脂肪酸は、バター、クリーム、動物性脂肪と同じ飽和脂肪酸とオリーブオイルと全く同じ一価不飽和脂肪酸である。細胞膜は、飽和脂肪、一価不飽和脂肪、多価不飽和脂肪の組合せになっている。


食事で脂肪を摂る量が多ければ、その分体が作る量は少なくなる。しかし、市販の植物油のような不自然な多価不飽和脂肪酸をたくさん摂取すると、正常な飽和脂肪を作らずに吸収された多価不飽和脂肪が体を作る脂肪として利用され、これが不自然なバランスの細胞膜を形成する事になる。

その結果本質的に以下のようなことが起こる。低脂肪で炭水化物の多い食事によって、体は必要な飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸を作るようになる。食べた脂肪の大部分が飽和脂肪と一価不飽和脂肪の混ざったものであると、丁度体が作る脂肪と同じである。このような状態だと細胞膜を構成する重要なリン脂質を作るのに必要なだけの脂肪酸があるので問題はない。一方、食べた脂肪の多くが不飽和脂肪であると体が必要とする以上に不飽和であるため膜特性にいろいろな違いがでて正常な身体機能に有害であると考えられている。多価不飽和脂肪の摂取量が多いと組織内のコレステロールが高くなり成長期の動物では脂肪細胞が増え、免疫システムの反応が変わり、セロイト色素等の酸化物質が増え、腎臓結石を作り、何よりも血中のHDLコレステロールが下がる。


飽和脂肪酸は、必須脂肪酸の適切な利用や骨の効率的形成に必要であることが最近示されている。飽和脂肪酸の摂取は血中のLp(a)も下げる。Lp(a)が高いのは心臓病の印である。教科書では、飽和脂肪が肝臓を保護するとなっている。

従って、家畜を選抜したり飼ったりする事は、自然で人道的に飼われる場合は特に蔑視すべきではない。何千年となく、家畜は人類にエネルギーを与え効率的に活動する助けになってきた。動物の家畜化は、人類に質の高い肉と脂肪が確実に手に入るようにしたし、人類を危険で不安定な狩猟採集生活から開放して精神的、霊的な成長にもっとエネルギーを注ぐ事を可能にしたという意味で人類に飛躍的進化をもたらした。
サリー・ファロンとメアリー・エニグ博士

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page last modified:  01/18/2001

 

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